Green, Forest and Nature.

WEBLOG articles by the Vice Chairperson of The Mountain Naturalist Club

写真展「阿蘇の自然と波野の日常」2022年11月

Aso and Namino Exhibition 2022

2022年11月8日から 道の駅波野・神楽苑 で
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」Aso and Namino Exhibition 2022
が開催されます。
道の駅波野・神楽苑 と、日本緑化工学会 生態・環境緑化研究部会 と、九州産業大学 内田研究室 との共催です。地域の方が撮影した写真もたくさん頂きました。

道の駅波野・神楽苑ホームページはこちら
道の駅・波野 神楽苑オフィシャルサイト

写真展「阿蘇の自然と波野の日常」2022年11月8日から1ヶ月程度
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」1
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」1
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」2022年11月8日から1ヶ月程度
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」2
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」2
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」2022年11月8日から1ヶ月程度
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」3
写真展「阿蘇の自然と波野の日常」3

身近な自然学・神宮外苑で晩秋の植物観察をたのしむ

身近な自然学・神宮外苑で晩秋の植物観察をたのしむ

2022年12月3日(土)に、山の自然学クラブでは現地講座「神宮外苑で秋の植物観察」を開催します。

身近な自然学・神宮外苑で晩秋の植物観察をたのしむ
2022年12月3日 身近な自然学・神宮外苑で晩秋の植物観察をたのしむ

樹木医の石井誠治さんにご案内頂きながら、100年前に形作られた場所、そして2021年の当地2回目となるオリンピックに向けて形作られた場所、そしてこれから改変されるであろう場所を見て回ることができると思います。終了後に、また報告をのせたいと思います。

森の妖精・おばけ? ギンリョウソウと森の関係

2020 年 7 月のことです。私たちの活動地(森林復元の対象地)でギンリョウソウを見ることができました!

透けて見えるような白い色をしていて(色素がないためなので表現がビミョーですが)、湿った暗い場所にふわっと現れるようす、なんとも神秘的な植物です。森の中での 妖しげな存在感から別名でユウレイタケとも呼ばれています。
ギンリョウソウが出てきた ということは、土壌が豊かになっている証拠でもあるので、森の復元を実感できる、とても嬉しい出来事だったのです。

写真1:ギンリョウソウ 活動地で2020 年 7 月 18 日撮影
写真1:ギンリョウソウ Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara 活動地で2020 年 7 月 18 日撮影

ギンリョウソウは漢字で書くと「銀竜草」。

→ 透明感のある白い体をしているため「銀」。
→ 花の部分を鎌首に、茎を体に、茎のひだを鱗に見立てて「竜」。

こうした見立てから、銀竜草(ギンリョウソウ)と名付けられたとされています。
うろこのように見えるのは、葉っぱの名残(鱗片葉)だそうです。

写真2:同じく活動地で2020 年 7 月 18 日撮影
写真2:同じく活動地で2020 年 7 月 18 日撮影

そして、キノコのような姿かたちですが、菌類ではなく、ツツジの仲間の植物です。花だけではなく全身が透明感のある白色。この株はもう花から実になってきており褐色っぽくなってしまっていますが、発芽から開花までは銀色の名の通りもっときれいな真っ白をしています(’見えます)。

ギンリョウソウの白い花は他の森を歩いているときにも多く見ることがありますが、花の後にできる実も中は白です。落ち葉の中に茎が倒れると、果実の外側は茶色がかった色となり、もう見つけるのは難しくなります。そうなった後は、森の中の虫たち(カマドウマや森林性のゴキブリ類)に果肉をあげて、種子を運んでもらっているそうです(引用 1)。

全国に分布していますので、散布者(種子の運び手)は森によって異なるようですが、林床(森の地表)にすむ虫たちであることは共通しているようです。

ギンリョウソウは「菌従属栄養植物」という分類に入ります。つまり、光合成をやめてしまい、菌類から栄養をもらって(実際には勝手にとっているので=奪って)生きる種類の植物です。ギンリョウソウの場合は、ベニタケ類の菌糸から栄養を得ています。

写真3:同じく活動地で2020 年 7 月 18 日撮影
写真3:同じく活動地で2020 年 7 月 18 日撮影

ほかの生き物と共生関係をもつ生物は多く、ほぼすべての地上植物は何らかの菌類などと共生関係を持っているといわれています。

また、花粉をもらって受粉をする、養分をもら って種子を運ぶ、など、生き物はお互いにいろいろな関係を結びながら生きています。森の中でも様々な生き物が「もちつもたれつ」生きているのですね。

写真4:西臼塚で撮影
写真4:西臼塚で撮影

写真4は西臼塚(同じ富士山南麓に位置します)の近くで見つけたギンリョウソウです。このときはウラジロモミの植林地に生えていました。ギンリョウソウは 腐食の多い森林土壌ができないとみることができません。発芽、生育には菌との関係が必要となりますので、乾燥するところは適しておらず、適度に湿っていなくてはいけないし、強い光が直接差し込むような環境のところには生えません。
自分で栄養を作ることができないため、一種のみで自立した生活はできないのですが、そのリスクを背負っていても十分生きていくことができる、という豊かな森林の環境がこのような生き物をはぐくんだ(このように進化した)とも考えられます。

私たちが森林復元活動でモットーとしているのは「森づくりは、土づくり」ということ。
活動に取り組んでいる中で「森を再生するということは、土壌を含む生態系全体を育てていくこと」だといつもお話をしています。植生が変化していくと、根と共生する菌の種類や生育範囲がかわっていきます。これは、生態系全体を整えていく活動だと言い換えられます。

「土」とは森林土壌のことです。泥や砂や礫(大きさで区別した、石が小さく砕けた物質)に有機物が混じると「土壌」になります。大きな人間の目では全く生き物がいないようにも見える土の中には様々な生き物や微生物が生きていて 生態系が成り立っているのですね。

※引用 1:Uehara Y & Sugiura N (2017) Cockroach-mediated seed dispersal in Monotropastrum humile (Ericaceae): a new mutualistic mechanism. Botanical Journal of the Linnean Society. 10.1093/botlinnean/box043